なあ俺今ひとつだけ願いこと叶えてもらえるって言われたらすごく迷うと思うんだよな。っていうか迷う。
あのな、別に億万長者になりたいとかモテたいとか世界征服したいとかそういうつまんねえことじゃねえんだ。もっとつまんねえこと。でも俺にとってはすげえ重要なことなのよ。
まず一つ目は俺を殺してください。っていうこと。あ、でも条件があるんだ。ただ死ぬなら俺別にひとりでどうにかできるから。舌噛み切ったり色々あるだろ。後は抗争中にボサッとしてりゃあ10秒でオダブツだ。でも、そりゃカッコわりぃな。うん。どっちかっていうなら明確に自分から死んだって分る方がいい。
ああ、それで重要なとこ、こっからがさ。条件ってのは天国に行かせてください。っていうこと。そんなとこあるだなんて俺ずっと信じてなかったけどさ、不思議なもんだな。大切な人間が死んでいくと、その存在があってくれなきゃ困る、そう思って信じるようになる。ホント、信仰心の薄いやつだよ、俺ってやつは。
それから二つ目な、二つ目は黄泉帰りを頼みたいってこと。あの日、あの時あのまんまのお前に帰って来て欲しいんだよね。もしかしたらもう天国っていう世界で幸せな生活してるかもしれないのに、それを引きずり降ろそうってんだ。でもそんなの知ったこっちゃねえんだ。俺の願いことだから、俺だけのこと、考える。
どっちがいいんだろうな、お前が帰ってくるのと俺がお前のところに行くの。なあ、どっちがいいんだろう。この醜い世の中をまたふたりで生きていくか、俺の知らない世界でふたり暮らすか、なあ、どっちがいい?ふたつとも叶えてあげますよ、ってもし気前のいい事になってもそりゃあ困るんだよな。俺が死んでお前が生きて。おかしなことになる。そしたら俺はまたお前に会いたくて会いたくて喉を掻きむしるような感覚と焦燥感に駆られながら色んな奴らにイライラしなくちゃいけねえんだよ。そりゃあダメだ。何にも今と変わんねえ。
まあとにかくな、ひとつ言いたいことはアレだ、お前、うん、お前、そうだよ、、帰ってこいよ。俺、死にそうにさみしい。


06.6.3