ほんと俺って今までよく考えたら全部をストレートに解決してきたんだとなあと。元々難しいことはあんまりすきじゃなかったし、ほら、いい例として小4の時変化球っていう存在を知った俺だけどそれなら打たれないくらい早い球を投げればいいと思ってめちゃくちゃにストレートの練習をしたのも覚えてる。まあ要するにアレだ、俺、直線勝負すきなわけよ。



「やべー!急がないとに鉄拳くらわせられるー!ってうおぉぉおおおお!」


すっげえ、声!廊下から哀れ無残な叫び声と共にビタン!と痛々しい音も聞こえてきた。うわーこれ絶対転んだな。俺はひとりで面白くなって笑ってしまった。だってこの声は絶対にあいつだし、なんだようおおおって。教室の廊下側の窓を開けてみるとやっぱりそこにはがいた。ていうか、だと思ったから、開けたんだけど、窓。


「おう、大丈夫かよー。」

「や、山本!いま、見てた!?見てた!?」

「見てないけどさー、お前転んだだろー。」

「ち、違うよ!今ちょっとそこにさあ画鋲みえて拾おうとしたんだよね!だから決して今転んでこの体制になったわけじゃないからね!」

「あっはっは!ならいーけどよ。」


すげえ嘘つくなあコイツ。廊下に倒れこんでる時点で転んだだろ、画鋲拾おうとしたってどんだけ激しく拾おうとしたらそうなんだよやっぱコイツおもしれーなー。顔まっかでさ、髪もぐしゃぐしゃで靴下だってすげえ下まで下がってるけど俺すげえドキドキしてんだよな情けない話だけど。


「で、画鋲拾えたか?」

「う、うん!拾った拾った!これで並中の風紀を守ったね!雲雀さんに褒められちゃうね!すごいよあたし!」

「雲雀が?うらやましいはなしだなーオイ。」

「ていうか山本何してんの?部活じゃないの?」

「あ、俺?補習、数学の。つっても自習だけど。この前のテスト赤点だったんだよなー!あはは!」

「あっははー!山本ってばかだったんだー!あれ30点以下のひとだけの補習でしょ?いま補習やってんの山本ひとりじゃーん!オンリーばか!あははー!」

「はははー!本当はツナもいたんだけどさーあいつ今日欠席なのな!ひとりで切ねえや!」

「ドンマーイ!たっけすぃー!ツナと山本のふたり?じゃあひとりじゃないね!ふたりばかー!ぎゃはは!」

「おいおいお前人のこと言えんのかよー!聞いたぜー七組のやつから。この前数学最下位だったんだろー?」

「う、うっそー!何で知ってんの!?」

「俺の情報網あなどんなよー。」

「うわやべー!は、隼人には言わないでな!」

「おう言わねえ言わねえ!お前怒られんだろー?あんま悪い点数取ると。」

「う、うん・・隼人に教えてもらってるからね・・・悪い点数取ると首絞められる・・・!」

「すげえなお前らー!首絞められるとか!すげえー!」

「こ、怖いんだぜ隼人!笑いごとじゃねえぜ!」

「ていうかお前さっきからパンツ丸見えだぜー!はははー!」

「う、うぉおおおおおお!!?」

「はははははは!やっと気づいた!」

「お、おまー!そういうことはもっと早く言えよばかー!」

「ははは!いやわざと出してんのかなーって水玉を。」

「ひーーー!何言ってんだこら!わざと出すわけがないだろが!なんだ!?わたしは!見られて楽しむ趣向のひとか!?そんな性癖もってねえっつのォオオ!」

「わりーわりー!どうもごっそさんでした!」

「うわーん!山本のばかー!さわやかエロスー!ごちそうさんとかこのばかー!」

「悪かったってー!これやるからさ、ほら」

「・・・・しかたないな・・・」

「機嫌直ったか?」

「直らねえよばか!このーこんなちょっとおいしそうな飴ひとつで私を買えると思うなよこなくそー!」

「わりーって!思ってないからよ。」

「ならいーけどな!ってうわヤベー!はやくしないと!待たせてるんだった!」

「ヤベーな!早く行かねえと鉄拳くらわせられるんだろ?」

「・・・!き、聞いてたのか山本よ・・!じゃ、ばいばーい!補習がんばれよ!」

「おーサンキュー!」

「じゃーねー!飴玉サンクスー!」

「じゃなー。」




また廊下を走りだしたが手を振るから俺も見えなくなるまで手を振った。あ、またあいつパンツ見えた。あんな短いスカートはいてるからだよなーまったく。俺ばかみたい。には見えなくてよかったけど俺いまにも勃ちそうなんだよな情けないはなしだよなホント。俺だって一応な思春期なのさ、この前保健体育で勉強したけどこの年頃の男子ってのは異性に興味があるわけよこれ、しかるべき現実。科学的根拠だってあるんだから許してくれや。俺、そんなに女子に興味あるわけじゃねえけどお前にはすごく興味あるんだよ。なんでお前なんだろう。何度も思った。くっそー。悔しいな、俺、なんだ、さっきからすげえどきどきしてる。とふたりで喋ってこんなにどきどきしてのパンツみて勃ちそうになって、なあ俺やっぱお前がいいんだよ。のパンツはピンクに黒い水玉がついててレースまでついてた。あーやべーよ俺、ホントは窓開けたときからのパンツ見えてるの知ってたんだよ。ほんと情けねえなあ男って。は獄寺とどこまで進んだんだろーなー。キスくらいはしてんだろうなあもう半年だし。セックスしたんかな。・・・あーなに考えてんだよしっかりしろ俺。そして勃つな俺の分身よ。本当さいあくだ。友達の彼女が好きだなんてさ。認めたくねえけど俺、多分すっげえのこと好きだ。思いっきりあの細い体を抱きしめたいしいつもおもしろいことばっか言ってる口にもキスしたい。それからセックスだってしてえよ俺。なあごめんホント、いつもお前のスカートの中身が気になるよ。ぶっちゃけな。好きなら好きだって言って抱きしめたい。はっきり。回りくどく考えるのは苦手なんだ俺。けどさ、よく考えてみろよ、そんなことできるわけねえじゃん獄寺の彼女なんだからさは。もし本当にさっきあげたみたいな安い飴玉ひとつでお前を買えるなら俺いくらでも持ってくるんじゃねえの?それであいつにキスしてあいつとセックスしたら獄寺はどうする?怒るに違いねえな。俺、殴られるんだろうな。それで口ン中切れても、血の味しても、どんなに俺が悪くても俺、きっとが好きだ。悪ぃ悪ぃ!って笑いながらきっと獄寺を殴り返すんだろうな。ごめん。でもよ、そんなことできるわけねえじゃん。獄寺の彼女なんだからはさ。今までみたいにストレートで一発決められたらいいのに。変化球なんかより、あのキャッチャーのグローブにボールが勢いよく入ったときの音、最高なんだぜ。ストラーイク!って。あーこのグラフ全然わかんねー、なんだよ関数とか俺苦手だぜ?わかんねーなーこーいう場合どうすんだっけ、傾き?ってどれのことだっけな?えーととりあえず、これ?だったっけかな傾きって、これが傾きならここのaは、こうして、うあーわかんねえーな、どれが傾きだっけな?この関数全然わかんねえ。





ストレート少年に舞い降りたのは、・・・そう思春期という名の変化球であった!






061008(悩むよずっと)