みんみんみんみんみんじゅわじゅわじゅわじゅわじゅわ








廊下をぱたぱたと歩く足にすこしばかり汗をかいている。そのせいか一歩踏み出すたびにじわりといやな感触がして思わず顔をしかめる。
顔をしかめればかろうじて額のあたりでとまっていた汗が顔にだらりと垂れてくる。(うえ、きもちわる。)
その汗を手で拭っていると少し先にある茶の間から「あ"ー・・・」というなんともやる気の無い声が聞こえてきた。
茶の間へ入るとそこには声通りやる気の全く感じられないだらりと畳の上に横になっている隊士の後ろ姿があった。




「いた、。」


「あー、さがる。」



名前を呼ぶとはなんとも面倒くさそうに体をこっちに向けて間延びした声で返事をした。


「探したんだからなー。」

「なあにー?どーしたのー?」

「副長が呼んでる。お前見回りの時間なんだろ。」

「あー、やだーめんどくさーい。」

「さっさと行けよ。俺が怒られるんだからさー。」


うーん・・・と体をよじるはボタンをみっつもあけているせいか思わずどきりとしてしまった。(いやいや、)(俺だって男だし)(・・・)
一瞬起き上がろうというような素振りを見せた後すぐにまただらりと畳の上にうつぶせになってしまった。



「・・・・」

「・・・?」

「・・・・」

「ー?」

「・・・おーい。聞こえてる?」


「・・・・・。」



いくら呼びかけてもぴくりとも動かないに、はあ、とため息をついて俺も畳の上に腰をおろした。
暑さのせいかなんだか頭がボーッとしてきた。目の前の机に肘を突く。部屋には扇風機のブゥーンという音が、テレビからは結野アナが「今日は記録的な猛暑になるでしょう。」というわかりきった事実をにこやかに伝える声がする。
ああ、暑い。夏特有の匂いと畳の匂いがむわりとしてきてなんだか視界がぐらりと揺れた気がした。




「・・・・・面倒くさい。」



しばらくボーッとしているとやっとの声がした。
あ、そういえば俺副長に頼まれてたんだ。危ない危ない。忘れるところだった。暑すぎてうつろになりかけていた目をギュッと瞑って意識をはっきりさせようとする。


「はやくしろよー。お前もまたキレられんぞー。」

「さがるこそ仕事しなよー。」

「俺は今休憩時間なんですぅー。」

「暑いよぉー・・・・」

「暑いなあー。」

「さがる、見回り、さがるが行ってー。」

「は!?」



何を言い出すかと思いきやこいつ・・!だるそうな声で顔も上げずに喋るはどう見ても人にものを頼む態度じゃないし、俺はそこまでお人よしでもないのだ。



「自分で行けばかちん。」

「お願いー。」

「嫌ですー。」

「さがるー!大好きィー!」



またしても急な言葉に思わずドキリ!としてなんとも情けない顔をしてしまった。いやいや。負けないぞ俺は。俺だって疲れてるんだ。こんな言葉くらいでクソ暑い中の見回りを代ってやるほど安くない。(ハズ・・!)




「な、に言ってんだ。代わらねーかんな!」

「愛してるー!お願いー!さがるー!」

「だー!うるさいうるさーい。自分で行け!」

「・・・・・」





顔をあげずに足をバタバタさせていたが急にまたぱたりと大人しくなってまあたふて腐れてる・・!なんて呆れてそっぽを向いてやった。









「・・・・・。」



「・・・・・。」



「・・・・・・。」



「・・・・・・。」



「・・・・・ ・ ・ ・ 」



「・・・・・・ ・ ・ ・ (ああもう!!)」






どうも無視を決め込んでみたけれどあまりにも静かになってがやっぱり気になってしまう。(ほんと駄目だなおれ・・・!)(まるでだめな退・・!)(マダサ?)(語呂悪ッ!)




「・・・。」

「・・・・・。」

「ー・・」

「・・・・・。」

「ちょ・・・・・?」




まさかこいつ暑さで気絶でもした?何度呼びかけてもぴくりともしないはあまりに静かで心配になって近づいて見る。
「おい、・・・、」そろりとに手をかけようした瞬間がばりとが起き上がって飛びついてきた。予想もしていなかったことだった上にすごい勢いだったのでそのまま後に倒れこんでしまった。




「うおっ・・!」





ごつんと鈍い音と一緒に頭をぶつけてしまった。此処が板の間じゃなくて畳だったからよかったものの、痛いものは痛い。
「なにすんだよ、」と文句をいってやろうとした瞬間の顔がすごく近くに迫ってきていて、そのまま俺の講義は腹の底に引っ込んでしまった。


「うむっ・・・!」


それもそのはず。一瞬何が起こったかわからなかったけれどすぐにわかった。俺の口はのそれに塞がれていた。
しかいきなりだったのでまだ身構えも出来てなかった俺はもう面白いようにに翻弄されていた。
その上かなり濃いもので、ほんとこれ呼吸困難で死んでしまうんじゃないの?そんなことをぐらりと考えた。




「ぷはっ、・・・ハァ、はあ」

「さがる、」

「な、」


なんだよ!そう言おうと思ったのに。



「大好き。お願い。」




耳元でそんな風にささやかれて思わず顔が真っ赤になったのがわかった。
・・ああもう!



「だーっ!!仕方ねえな!」

「やったー!」







結局俺はこいつに甘いんだ。はあ、とため息をつきながら起き上がって廊下に出る。それからうらめしそうにちらりと振り向くと満面の笑顔では言うのだ。








「アイス買ってきて!氷系のね!」







ちくしょう!














I indulge you!

(結局いつもこうなるんだ。ガリガリくん片手に少しだけため息。)






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翠凪美苺姫 さんに奉ぐ・・・!
お待たせしました・・!お待たせいたしましたァァアアアア!!
6190HITリクでございます!もう全然甘くなくてほんとすみませ・・・orz
6190HITありがとうございました!

06.4.30