「ずいぶんつまらないニュースばっかりね。」


「そうかよ。」


「ええ。」


けだるそうに着物を羽織った高杉は私の話をちゃんと聞いていたのかしら。 二人でテレビの、前にいるけど、 テレビからはひどくつまらないニュースしか流れてこない。 コスモスが綺麗な時期になりました。とか、今日、各地で収穫祭がありました。 とか、若手音楽家の発表会がありました、とか、 本当。つまらない。


「どんなのがおもしれぇんだよ。」


あ、ちゃんと聞いてたんだ。


「もっとね、刺激的なニュースがほしいのよ、」


「なら俺が二、三人殺してやろーか?」





くくく





肌蹴た着物を肩に掛けながら高杉が喉を鳴らして笑う。


「いやよ、やめて。普通なのじゃつまらないのよ。事件性が欲しいの。」

「酷い殺し方してやるっての。」

「ダメ。事件性が欲しいの。」

「どんなだよ。」

「もっと、奇妙な話。」

「気持ち悪りぃやつ。」

「ごめんなさいね。」


高杉がのそりと動いた。 そのまま少しずつこっちへくる。わ、怖い。 それに折角肩に掛けなおした着物がまただらしなく下がってしまった。


「や、どうしたんですか、高杉さん。」

「いやな、」


高杉はどんどん近づいてきた。 もともとそんなに明るくないこの部屋がもっと暗くなる。 高杉は止まらない。 そのまま高杉はあたしに噛み付いた。


「痛・・・。」


唇に鈍い痛みが走る。紅色の液体が口を汚してく。


「俺がお前を殺してやろうか?」


心臓が跳ねた。その後すぐに嫌な汗をかいた。


「え、やだ。」


当たり前。だって怖すぎる。死ぬなんて、怖い。 だってどうなるんだかわからないんだもの。 よくあるように天国に行くのか、それとも目を閉じたらそれっきりか。 とにかくあたしにはそんな度胸はない。


「だろうなぁ。」


「うん。怖いし。」


くくく。


「なんで、あたしを殺すの?」


「事件性を狙って。」


「どんな?」


「綺麗で奇妙なもんだろ?この世で一番殺したくないものを殺すってのは。」


「あ、そうね。」


「だろ、」


くくく。


ごめんなさい。すごく変な事言って、


「ごめんね。変な事言って。」


「ほんと。気持ち悪い奴。」


いいよ、許さないとかそういう言葉は返ってこなかった。 いいよいいよ。ちゃんとわかってるから、


「なんでこんな事言いはじめたんだよ。」


「うん。別に、なんでもない。」


「ま、いーけどよ。」


そういって高杉はだらんと壁に寄りかかった。 もちろん着物もだらんとだらしなく肌蹴てる。


だって言えるはず無いじゃない。もっともっと凶悪な事件が起きて、 あなたよりもっともっと凶悪な犯罪者があなたを隠してくれるのを期待してるなんて。 警察も幕府もみんなみんな貴方にくびったけだから。


「高杉、」


「あ?」


「逃げてね。上手に。」


「あー」


お願い。上手に逃げて隠れて。あたしは日々あなたを隠してくれる犯罪者を願ってるから。



サスペンスショー





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わかりにくすぎる。アイター!

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