「チョロメリア」


































「で、なんでさァそれ」



わたしの口から出てきた不可解な呪文に目の前でリンゴを食べてる総悟が質問をしてきた。
うーん。特に意味はないのだけど。ただまん丸としたリンゴをガリガリ食べてるだけなのに絵になる
この目の前の男にちょっと悔しさを覚えたから、ちょっと皮肉をいってやった。




「ちょっとロマンチックな目でリンゴを食べないで下さい貴方は。の略。」




そーいうと総悟は(へーェ)と明らかに痛々しいものを見る目でこっちを見ていた。(あのサディストがこんな目で人を・・・!)(ショック!)
お目目なんてキラッキラで肌は白くて髪の毛はサラサラ。リンゴを食べてるだけで(ましてやここは畳の茶室だ。)(しかも部屋のテレビでは通販番組が流れてる。)ロマンチックだなんて許せない。



「総悟ー、そうごー」



「なんでサァ」



しゃりっとリンゴをかじりながら総悟は返事をするけど目線はテレビの中の万能包丁に向けられてる。
あたしは万能包丁以下か・・・・
もうあれだ。空気自体がダレきってる。あたし自身机にあごを乗っけてやる気の無い声しか出ないのだから。



「なーんでそんなにロマンチックにリンゴが食べられるんですかー?」



「知らねーよ。そんなこたァ。」



「ふーん。」



なーんだ知らないの。まあ知ってたら知ってたで自分研究化(いわゆるナルシスト)みたいで嫌だけど。
そんなことを思いながら自分の容姿を思い出して涙が出そうになった。
目の前にいるのは紛れもなく男なのに、わたしより睫毛が長くて肌は白くて、髪はサラッサラで。
私は本当に女なのかわからなくなってきた。(言い過ぎか?)




「そうごー」



「なんでさァー」



あからさまにやる気の無い返事が返ってきた。彼の目線はテレビの中の空気式ベッドに注がれてる。




「あたしも総悟みたいにロマンチックにリンゴ食べてみたいー。」



「・・・・・」



急に総悟が黙ってしまったなあなんて思ってたら急に空気式ベッドから180度回転したあたしに彼の目線は変わった。
相変わらずリンゴ片手にガリガリ言わしてる。そのままずっと総悟の上半身が近づいてくる。
わ、わ、わ、ちょっとちょっと近すぎるんじゃないのお顔が・・・わ、睫毛なが・・・・










テレビの中から(ワッ)とあがる驚きの声と一緒にあたしの口にはリンゴの味がした。




















「どうでさァ。中々ロマンチックなリンゴの食べ方じゃあねェですかィ?」










「・・・・え、え、え、え、(!?)」







にやりと笑う総悟は紛れも無く近い場所にいて、間違いなくあたしの唇と総悟の唇はこんにちわをした。
総悟は「はー。ねみィー」とか言いながら例のアイマスクを装着して畳の上にごろんと横になってしまった。








あれ?どうやら、わたしも、めでたくチョロメリアでびゅー?











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急にチョロメリアという単語が頭をよぎりました。


06.2.8