「まちぼおけーまちぼおけー!」このまえ音楽のじかんに習った歌がわたしのさいきんのおきにいりでよく歌っててきょうもやっぱりウサギのえさをあげながら歌った。あの歌のページに描いてあったうさぎ、かわいかったなー。わたしうさぎだいすきだからうれしかったなー。うおー!ちょっ、ちょー、きょうは元気いいなピョン助!おまえちょっと食いついてきすぎだぞうおー!うおお!いったああい!あたしの手!それあたしの手だよピョン助ェェエエ!うさぎ小屋は職員室の前にあってあんまり大きな声を出すと先生が出てきちゃうからあんまり大きな声出したらヤバイんだって!わかってんのかピョン助!もうしちゃダメだぜピョン!よいしょっ、とキャベツの芯とか食パンの耳とかを入れてきたビニール袋を持ってはじっこの方でおとなしくしるピョン子のところへ行こうとしたら職員玄関から「ウフフ!」みたいな女の人の笑った声がしてちょっとびっくりして職員玄関の方を覗いてみたら玄関の前に男の子がひとりで立っていた。






「見たことないなあ。」





わたしの見たことのない男の子だ。ほかのクラスの子かなあ?あ、でも名札つけてないから違うのかな?今日は土曜日だから飼育がかりの子しか学校にいたらおかしいよなあ。でもあの子飼育がかりじゃないなあ。じゃあ誰だろう?わたしの知らない男の子はなぞだらけだ。わたし毎週コナンなら見てるから推理してみようと思った。うーんうーん。名札もないし飼育がかりでもないし、初めて見た。ていうことはこの学校の子じゃないってこと、?うーんそれでもうちの学校にいるってことは、えーと、?うちの学校のこじゃないこ・・?わからん・・・!なぞは深まりばかりだぜコナン!男の子をじろじろうさぎ小屋の中から見ていたら男の子はしゃがんで地面に何かを書きはじめた。あ!いてー!こらピョン助!足噛むな!あの子どうしたのかな?ひとりなのかな?なぞばっかりだ。なぞ少年だ。でもなぞ少年はなんだかつまらないんじゃないのかなあ、だってひとりだし。私、はなしかけてみちゃおう。急いでピョン子にエサをあげてピョン助とピョン子が小屋から出ないように気をつけながら小屋を出て少しだけ髪の毛がグシャっとしちゃったから手で二回くらい押し付けて準備完了だ!行くぜ




「ねえ、きみひとり?」

「!」




なぞ少年の前に行って話しかけてみたらすごくびっくりしたような顔をしてなぞ少年はわたしの顔を見た。そんなにびっくりしなくてもいいのになあ。わ、なぞ少年ってば女の子みたいにかわいいな顔をてるなあ、目の色もすごくきれいだ。私の持ってる絵の具の中にはない色だ。何色っていうのか?わたしはこれも聞いてみようと思ってなぞ少年の隣にわたしも座ってみた。(お邪魔しますよーっと)




「ねえ、きみどこの学校のこ?なんでうちの学校にいるの?」

「・・・・、あ・・」

「?どうしたの?あ、いきなりごめんね。わたしって言うの。飼育係りでね、うさぎが好きなんだ。」

「・・・・、」

「ねえ、きみなんていうなまえ?」

「・・・・・」

「あれ?もしかしてなんか怒ってる?ごめんね!」

「・・・・・」

「・・・・(困った!)」



なぞ少年はちっともわたしのほうを見ようとしないでずっと地面を見たまま黙ってる。なんだよー無視しないでほしいなーさみしいじゃんかよ。わたしが嫌なのかな?わたし何かわるいこといったかな?それとも知らないこだから喋っちゃいけないと思ってるのかな?でも少しくらいこっち向いてくれたらいいじゃないのさあ。



「ねえねえ、なに描いてるの?これ、うさぎ?」

「・・・・・」

「あ!あのね、あっちにうさぎがいるんだよ、見る?ぴょん助とね、ぴょん子って言うんだけどね、かわいいよ!」

「・・・・・」

「・・・ねえ、ちょっとくらいしゃべってよー」

「・・・・、」

「うわ!やっべもう四時だ!はやく帰らないと怒られる!きみはまだ帰らなくていいの?四時の鐘鳴っちゃうよ?」

「・・・・」

「思い出した!わたし今日算数のドリルやんないといけないんだ!なぞ少年ばいばい!次会ったときは少しくらいしゃべってね!」

「・・・・」

「ばいばーい!」




なぞ少年はけっきょくわたしとしゃべってくれなかった。ちょっぴりさみしいなあ。うさぎの絵描いてたからうさぎ好きなのかなあ?なぞ少年の目の色はけっきょく何ていう色なのかなあ?どうしてうちの学校にいたのかなあ?まだ帰らなくていいのかなあ?わたしのこと嫌いかなあ?なぞ少年ってほんとなぞだらけ。そんな風に考えながら走り出そうとしたら小さくて、すごく小さい声で「うさぎ、すきだよ。」って聞こえた。わたしは急いで後ろを向いた。そしたらなぞ少年が立ってこっちを見ていた。なぞ少年だ!はじめて聞いたなぞ少年の声にうれしくなってそれからなぞ少年もうさぎがすきだってわかってすごく嬉しいなあなんて思って、でもやっぱりちゃんとわたしに話しかけてくれたことが一番うれしいなあと思った。





「うさぎ、かわいいもんね!」





わたしはうれしくなっていつもよりはやく走れた気がした。うさぎかわいいもんね!「まちぼおけーまちぼおけー!」家に帰ったら夜ごはんがカレーでもう今日ってばさいこうだなって思った!






061007