03
「ジューニーアー」
午後6時30分。辺りは少し暗くなっている。ご飯の用意もしたし、あとはご飯が炊けるのを待つだけだ。
ホントはたくさんのお皿なんかを運んだり並べたりしなきゃいけないけれど、今日は山崎くんが手伝ってくれたお陰でほんの30分で終わった。
いつもなら一時間はかかるのに・・・(・・・)
とりあえず時間もあることだし、ちょっとしたお誘いをするためあれからすっかり元気を無くしてしまった土方Jr.(仮)の元へ行ってみる。
あたしがお世話係りなんだから面倒を見なくちゃいけないんだけれど、隊士達のお夕飯を作らなくてはいけない。
というわけで炊事をしているときだけは非番の隊士達に面倒を見てもらうことにしたのだ。なにせ台所。しかも数十人分もの食事を用意しているのだから慌しいし、危ない。
そんな所にあんな小さな子供を入れればきっと怪我をするに決まっている。そんなことがあったら困る!
話を戻すが、非番の隊士達によるとなんだかんだで可愛がっていたらしいんだが(みんな子供好きそうだもんなあ・・・)
土方Jr.(仮)は「誰に口聞いとんのじゃぁぁああああ!」と絶叫した後に目の前の縁側にすとんと腰を下ろしてしまったらしい。(何様・・!)
「な、るほどー、」
非番の隊士達3人(一人は口にピーピーなる紙の笛をくわえてる。)(なんで?)と目の前の縁側に座る土方Jr.(仮)を見ている。彼の背中はどことなく寂しげだ。
「そーいうわけ。」
「そーそー。俺等駄菓子とか色々買って来たのに相手にしてもらえなかったんだよ。この笛とか。”ピー”」
「ありゃあー生意気な坊主だな。」
「そうでしょー!副長そっくりなの!(目つきもね!)」
3人とも口ではぶーぶー文句を吐いてるけどみんなどことなく嬉しそうだ。全く。なんだかんだで可愛いんだね。
「じゃあみんなありがとう!来週もよろしくね!」
「おう!」
「来週はキャッチボールでもすっかー。」
「だなー。」
3人の嬉しそうな声を背に土方Jr.(仮)に近づく。そうそう。本題。
「ジューニーアー!」
「・・・・なんだ。」
「ご飯の前にお風呂入っちゃおっかー!」
「いい。」
「なに言ってんの!あんなに走って!汗かいたでしょ!洗ってあげるからいこ!」
「ブッ!ちょ、ちょっと待て!お前何言ってんだ!?」
「いや、だから一緒にお風呂入ろうゼ!って。」
「な、なな、なに、おめー馬鹿言ってんじゃねえよ!」
「何言ってんの。ほら、行くどー!」
実はご飯の支度をしているときからずっとそれを考えていたのだ。お風呂。そうだジュニアとお風呂に入ったらきっと楽しいよね・・・!
よーっしこれからはジュニアとお風呂に入ろう!えーと確か洗面所の上の棚にアヒルセットと水鉄砲があったよね?よーっしゃ!今日はあれでジュニアと遊ぼう!
背中流してあげてー、頭洗ってあげてー、一緒に湯船に浸かりながらアヒルたちで遊んで十数えたりするんだ・・・!
ずーっとそんな事を考えていたので危うく包丁で指を切り落とすところだった。(あれはヤバかった)
「ちょっ、離せ!やめろ!・・・んぎゃっ!!」
「ぎゃーぎゃーうるさいんでィ。このエロガキ。」
サ デ ィ ス ト 参 上 ! !
「ちょっとォォォオオ!!なにするんですかー!アンター!」
急に現れた沖田隊長は土方Jr.(仮)の背中を蹴飛ばし、土方Jr.(仮)はそのまま外に顔から落ちてしまった・・!(なんてこった・・!)
夕方だからだろうか?彼の顔がいつもの1.5割増しに恐ろしいのは。
「てんめっ!この!総悟ォォォオオオオ!」
「うるさいんでさァ。なにと風呂で照れてんだ。おめえいくつだって話なんでィ。マセガキがよォ。」
そう言いながら隊長はうりうりと土方Jr.(仮)のおでこを小突く。あ、ちょっと楽しそう。
「なっ!照れてねェエエ!」
「なに言ってんですか隊長!アンタこそいくつだって話でしょーが!こんな小さな子に!」
土方Jr.(仮)とふたりでぎゃーぎゃー文句を言ってみるが目の前のこの人は聞いているのだろうか?ねえちょっと。「ねみぃー」じゃないですって。ちょっ・・ホント聞いてます?
ふと時計を見ればもう6時50分をまわっていた。大変だ。どんなに遅くても7時30分には食事を始めなくてはならない・・!時間がない!
予定では6時35分にはお風呂に入っていて一時間ほど楽しく過ごすつもりだったのに・・・!急がなくては・・・!!
「あー!もう時間がない!ほら土方Jr.(仮)!行くぞ!風呂!」
「だー!はーなーせー!」
「だって今ので泥だらけじゃん!はい!いこー!」
ひょいと土方Jr.(仮)を抱き上げる。はいはい行きましょうお風呂行きましょうー!(わくわく!)
「ちょっ!おい!離せ!降ろせ!降ろせぇぇええええ!」
「おい、止めとけィ。こいつぁー土方さんの息子ですぜィ。風呂場で何されるかわから、「するかァァァアアアア!てめえ俺をなんだと思ってやがる!」
「(はい。もう無視でいこうー。)」
ぎゃーぎゃーみんなで言い争っていると廊下の奥のほうから局長がやってきた。どうやら仕事がひと段落ついたようだ。
「お!何してんだみんなでー。」にこにこしながらトタトタとこっちへ向かってくる。
「あ!局長!お疲れ様です!」
「お!どうもどうも。で、何してんだ?」
「あ、今から土方Jr.(仮)とお風呂に行こうかって所です!」
「え!そうなの!?さき越されたかぁー・・・じゃあ、ジュニア明日はおじさんと入ろうなー。」
「!!おい!俺は近藤さんと入る!だから離せ!」
「え!?なにそれ!ちょっとー!そんな!(ガーン!)」
「え!?ホントか!!」
衝撃だ・・・!その瞬間あたしの楽しい計画は一瞬にして崩れ落ちた・・・!目の前にはパッと花でも咲きそうなくらいの飛び切りの笑顔を浮かべた局長。
あたしだって一応21歳・・まだまだ女としては若いはず・・!それがこんなおっさんにまけるだなんて・・!毛むくじゃらの・・・!むさいおっさんに・・・!
「ちゃん、口に出てますよ。ていうかちょっ、ねえ・・・ていうか毛むくじゃらって言った?むさいって言った?ねえ?ちょっ・・ちゃん?」
「ありえない。ありえない・・・!!」
「とにかくそーいうわけだ!離せ!」
「へーお前ェおっさんフェチなんでェ?それとも毛フェチかィ?」
「ねえちょっと・・俺=毛なの?ねえみんな。」
隊長はさっきとは打って変わってニヤニヤ嬉しそうだ。あなたの子はどうやら毛フェチのようですよ副長。
局長に抱きかかえられながら風呂場へと行く土方Jr.(仮)とく局長の後姿を羨ましさ満点で隊長と並んでみつめる。ちくしょー・・!
明日は絶対に一緒に入ってやる・・!明日は町にお風呂用のおもちゃを買いに行こう。そうだ。でっかい水鉄砲とか色々買って来よう・・・
ああ、そういえばもう7時だ・・・配膳・・始めなきゃ・・うん・・局長達があがったらご飯にしよう・・・楽しそうだなァ・・・ジュニア・・あたしじゃダメなの?
ねえ・・・ジュニア・・!あたしよりそんなおっさんが・・・
未練たらたらなことばかり考えていたあたしはよほど落ち込んでいたように見えたらしい。めずらしく隊長が優しく肩に手を置いて慰めるような声を出してくれた。
「そんなに落ち込むんじゃないでサァ。仕方ねェ俺と入るか。」
「遠慮しときます。」
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ぐったぐたですね・・!照れる土方さんが書きたかったんです。
これもベタネタのひとつです。ていうか本当に無理やりでごめんなさ・・orz
06.3.29
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