トシに彼女がいると知ったのは少し前のはなしで、たまたま知ってしまった。わたしと
トシは仲がいいからきっと彼はそのうちわたしにその事実を照れくさそうに報告するの
だろう。そのときは大袈裟に驚いて喜んでいるフリをしてあげよう。その演技を身につ
けるには時間は十分あった。決してわたしがトシを好きだったと悟られないように。無
駄な感情は全部腹の底に沈めてしまおう。夕日に照らされた教室にトシとわたしだけ。
目の前の日誌には当たり障りのない事実と(銀八ばか)そう汚く書かれている。これで書
くものは何もなくなった。前を見ればトシは何か言いたげだ。「お、そういえばよ、」
彼はそう口を開いた。嘘ばっかり。そういえば、だなんてずっとそれを言いたかったん
でしょう。わたしと違って彼は全く演技ができていない。「、付き合ってるヤツできた
。」少しの間の後そう続けた。さあ、少し時間をおいて。息を小さく吸って。大きく目を見開いて少し顔を上げる。いちにの、さん、「・・・え、嘘・・・!」そうだこう言うのだ。「・・・ん。」トシはただ小さくうなずいた。その頬は柄にもなく少し赤い。それを確認したわたしは一生懸命練習した笑顔で「よかったじゃん!」完璧だ。「さんきゅ、」そのまま笑顔を向けて少し笑っていればいい。それから大袈裟な言葉を並べればいいのだ。そう大袈裟で飾られたそれはまるで、
まるで、
スカーレットオハラのドレスの様に
06.2.19