かりかりかりかり、鉛筆の音が鳴り響く教室、私だけ違う世界にいるみたいにボーッとしてた。
目の前にあるのは難しいグラフに計算式。もうなにがなんだかわからない。今はなんの時間ですか?と聞かれれば数学のテストの時間です。
ただでさえ数学は苦手だっていうのにヤマが外れたのだ。諦めるほか無い。これでも一応、最初はマズイ、と背中に嫌な汗をかいた。けれど開始してから35分間三問しかできなかったのだから。
ここまでわからないとなんだか逆に落ち着いてきてしまって(もうこれあれだ悟り開けるな。)ちょっと神聖な気分になりながら額に汗を拭った。
あと少しで夏やすみなのに。あーあ・・・そういえば、もう夏だなあ、この前3年になったばっかりだと思ってたのに。受験生だなあ・・。
どうして私にはこうも実感がないのかといえばまだ進路というものが決まっていないからだ。3年生のこの時期にまだ進路が決まってないだなんてちょっとヤバイんじゃないの?なんて焦ってはいるものの焦れば焦るほど何をしたいのかわからなくなってきてまるで他人事のように思えてくる。
ああ、いやだなあ。私って将来なんになりたいんだろ?ぺらりと問題用紙を裏返してその裏になんとなくシャーペンをはしらせる。あ、!






カリカリカリ、






自分で書いた文字に思わず照れ笑いをしてしまった。










"土方くんのお嫁さんになりたいです。"










誰にも見られてないよね?なんて少し恥ずかしくなってその字を隠すようにうつ伏せになってひとり笑った。(いひひ!)(気持ち悪い!)(ひひ!)


























「名づけて号!」







テスト習慣なので部活が無くて、いつもより早く静かになった教室でひとりテストの問題用紙の裏を隠しながら紙ヒコーキをつくった。一番簡単な形の紙ヒコーキだ。昔はもっと複雑で遠くまで飛びそうな紙ヒコーキだって折れたのになあ、なんて思いながら窓から外を眺めた。
六月の終わり、もうすっかり夏が迫ってきていた。青々とした木に真っ青でくっきりと浮かぶ白い雲に思わず嬉しくなってしまった。
「夏だなーあ、これぞ青春ってかんじ!」どうも今日は気分がいいみたいで独り言が弾んでしまう。けれど教室にも廊下にも誰もいないのだから、いいじゃないか。なんだかそう思えた。







「ブーン!」






あまりにも清々しい日和だったから紙ヒコーキを片手に窓の外に飛ばすフリをしてみた。あくまで飛ばす"フリ"。こんなものうっかり飛ばして誰かに見られたら恥ずかしくて死んでしまう!(ましてや土方くんの耳にでも入ったりしたら・・!)(あたしキモすぎる・・・!)







「・・・本当に飛ばせたらいいのにー。」






真っ青な空をみて本当に勢いよくこの紙ヒコーキを飛ばせたら気持ちがいいだろうなあと思ってまたえいっと飛ばすフリをした瞬間、思わず手を離してしまった。






「ぎゃっ・・!!!」





背中がギュッと冷たくなった。幸い上手く飛ばずにすぐ真下に落ちてしまった。よかった・・!よかったけど・・(複雑・・!)
兎にも角にも、まずいまずい!急いで拾いに行かなくては、と窓の下を見る。その瞬間緊急事態が発生した。というかもう体が硬直だ。










「なんだこれ。」

「ひっ、土方くん・・・!?」

「・・・?」

「ちょっ、ね、それ絶対開かないで!お願い!今すぐ取りに行くから!まままままま、まもう待ってて!マジお願い!」

「あぁ?」








ああやばい!もう何言ってるかわけがわからないけどすごい速さで教室を出た。マジかよ!頼むよ神様!なんか変なロマンスとかいらないから!実際キモいからあたし!!うおおおおお!!
何度か階段から転げ落ちそうになったし恐らくパンツ丸見えだっただろうけどそんなことはどうでもいいのだ・・!もしあれを見られたら・・・!?
z組のみんなに冷やかされて(あいつ等容赦ねえからな・・!)土方くんからは軽蔑されて・・私の淡い恋心と青春は無残にも崩壊だ。想像できすぎて怖い・・!本当につむじからつま先まで凍りついたようだ・・・!





勢いよく校舎の角を曲がればそこには土方くんが立っていた。手元にはお目当ての紙ヒコーキ。(ある種爆弾だよ・・・!)





「ッハ、ハアハア・・!ご、ごめ・・!」

「ああ、これ。」







渡された紙ヒコーキは原型をとどめていて開かれていなかった。ホッ、とした。ああ、ほんと、よかったァ・・・







「あ、いやホントごめんね。」

「いや、別に。」

「うん。じゃ、じゃあ、ばいばい。」







なんだか手元の紙ヒコーキに書いてあるものがものだけに土方くんの顔が上手く見れない。はやくこの場から立ち去らないと心臓がうるさいくらいにドキドキしている。
顔まで赤くなっている気がするけど、走ったせいにしてしまおう。




そんなことをぶつぶつ考えながら歩いていると後から土方くんの声がした。








「お前さぁ、」

「え、?」






振り向くとそこにはにやりと笑う土方くんがこっちを見ていた。








「俺の嫁になりたいわけ?」









「・・・!!!!!!!!」























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ぐったぐたですみません・・!台詞ばっかりで・・・

19の歌を聞いてて書きたくなったんです・・・!もっと青臭くしたい!!


06.4.29