俺は馬鹿みたいにこいつが大切だ。すごく。4つも年下の女にこんなにも捕らわれているだなんて少し前の俺が聞いたらきっと笑ってしまうだろう。 しかしまあ、人間というものには本能という厄介なものが備わっていて、俺はそれに抗えないでいた。以前からの女遊びも中々止められずにいるのだ。 週に何回か他の女と夜を共にすることもあるし、合鍵だってふたつほど持っている。たまにその扉を開ければ温かい飯を作ってまっている女もいる。 けれどそんなものは全部"本能"による女だ。悪いがどの女もには敵わない。俺のいちばんはなのだ。それほどにまで夢中になるほど美人というわけでもないし、それだけなら他の女のほうが、勝っている場合のほうが多い。 それでもなのだ。その辺の女とならキスだろうが抱くことだろうか簡単にできるのに、それほどに夢中になるを抱くということはまだ出来ていないのだ。そこまで俺を臆病にさせる女が他にいるだろうか? 大切で、大切で仕方が無い。小さな子供が大事なおもちゃを中々箱から出せずにいる。まさにそんな感じだ。 そんなとも一緒にいるようになってからもう二年。その間他にも数え切れないほどの女が俺にはいたがは気づいていないようで特に何か問題が起きたことも無かった。 と一緒にいるようになって二年目の春の夜、そろそろ寝ようかと手にあった本を閉じ、布団から乗り出して枕もとの明かりを消そうとしているとガラリと襖が開いた。 誰かと思って目を向けるとそこには枕を抱えたが立っていた。 「どうした?」 「ご一緒してもよろしーですか?」 少し俯き加減にはそう言った。そんなちょっとした仕草も愛しくてたまらない俺はかなり重症だと自分でも思う。 「仕方ねえな。おら、」 布団を捲ってやるとは少し笑ってその中に入ってきた。(ちきしょう。)(可愛いじゃねえか。) 枕を自分の頭の下に敷こうとするの腕を掴んでが持参した枕をポイと布団の外に投げる。 一瞬驚いたような顔をした後「なにすんのさ!」と言って枕をまた引き寄せようとしたの腕をもう一度掴んでその頭の下に俺の左腕を敷いて「こっちのがいーだろが。」そう言うと少し顔を赤くした後、一瞬悲しそうなそんな顔をして「ありがと、」そう言った。(悲しそうな顔・・?)(気のせいか?) 俺の腕を枕にしながら少し俯いているからは石鹸のいい香りがした。目を閉じればいっそう香りが鼻をくすぐる。 すこしだけ暖かい夜、俺はなんだかおかしくなりそうだった。こんな状況だ。男として自然だろう。 しかし目が合うとヘラッと笑うを見るとそんな事を考えている俺がなんだか無性に恥ずかしく思えてきて、それからなんだかほのぼのとした気持ちになってきた。 ああ、いいじゃないか。こういうのも。 なんて考えながらの暖かさといい香りに心地のいい気持ちを覚えて、この幸せに身を預けて時折を見る。 ああ、幸せだなあと。そんなことをぼんやり考えていると急にが口を開いた。 「トシ、」 「・・ああ?」 俯いていて顔は見えない。 「トシには、ご飯を作るための女の人と、エッチしてもらうための女の人と、沢山いるでしょう?」 「・・・・・な、」 「なら、私はどんな役割りなの?」 頭を鈍器で殴られた気がした。あの心地のよい平和から一気に冷たいところに突き落とされた気分だ。何を、言ってるんだ、 「何、言ってんだ、」 「だってそうでしょう?私わかってるよ。怒ってないよ。」 「だ、から、」 まさかこいつがこんなこと考えていただなんて、・・・ショックだった。 別に他の女なんて気まぐれで、ただ暇なとき、足りないものを埋めるためのものでしか無かった。そんな女達の名前だって覚えていないのに、 言わなくては、いけない。しっかりと、言わなければ、 言わな、 けれ、ば・・・ 「ねえ、どんな役割なの?」 澄んだ目が綺麗で、まっすぐと見つめられた俺は何も言えなかった。 役 割 |