今の彼氏と付き合い始めてもう半年。けれど彼はあたしにキス以上をしてこない。
「ねー、」
「あー?」
「銀ちゃんさあー、」
「あー」
「・・・・なんでもなーい。」
「変なやつー。」
シャーーと気分良く風を切る自転車に二人乗りをしながらあたしは銀ちゃんに聞いてみようかと思った。
けれど今はそんなこと聞くような場面じゃないなあーと自主規制。(ほんとは怖いのかも。)
わー風が顔にくるー!ぶ!ふわふわの銀ちゃんの髪の毛が顔に来た!ふわふわ!
「ね、あとさーどんくらい?」
「あとなー少し。そこの角曲がったら。」
「そっかー。あ、この辺ちゃん家だ。」
「へー。」
「そーなのー。」
ゆるゆるーっとした感じが銀ちゃんでやっぱり心地いいなー。ゆるーい感じが。
今日は初めて銀ちゃんのお家に遊びに行くのです。わー!お母様になんて挨拶しよー!
そんなこと色々考えてたら急に自転車がキキィーッと音を立てて止まった。
「ぶ!」
「お。悪ィ。」
いきなり止まるから思いっきり銀ちゃんの背中に鼻をぶつけてしまった。ふぎ!
へー銀ちゃん家ってなんだか丁度よく古くていいなあー。コレくらいがあたしは好きですね。
そんな風に思って見上げたお家は至って普通の一軒屋でお庭にはヘチマとかが植えてあってなんだか素敵だった。
カラカラと自転車を車庫の奥に持っていった後ガチャンと音がした。自転車を止めたみたい。
そのあとカチャッと鍵を掛ける音がして銀ちゃんが「おれ前チャリ盗まれてさあー。次パクられたら歩かなきゃなの。」
なんてヘラッと笑って鍵をカチャカチャ振りながら見せてくる。
あーもう。そーいうぬけたハニカミ笑顔とかが可愛いんだよばか。
銀ちゃんはヒョロヒョロだし天パだし、なんか情けないしえっちだけどそんなトコが全部可愛いの。
もーあたしは重症だ。
「ねー、銀ちゃん家っていいいねー!」
「はー?何がだよ、こんなボロ家ー。」
「いいじゃんか。ヘチマなんか植えちゃってサ!」
「オメーありゃ小学校の時のをおふくろが上手に栽培しちゃったんだよ。」
「素敵なお母様!」
「素敵じゃねえだろーよ。」
「お母様になんてご挨拶しよー!」
「ふつーでいんじゃねーの?」
「いやー!最初が重要なのよこーゆうのは。」
「ふーん。」
「そんなもんかー」とか言いながら銀ちゃんは玄関のドアを開ける。
がちゃり。
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす・・・」
そーっと銀ちゃんの後を付いて中に入ると靴箱の上にお花と熊の置物が置いてあってこれまた素敵だった。
それから靴はみーんな綺麗に並んでる。しっかりしたお母様なのねー・・・
「あらー!いらっしゃい!」
!!わ!!お母様!
振り向くとそこにはニコニコした年相応な綺麗な女の人が立っていた。髪の毛はサラサラだ。
ボーッと色々考えてたもんだから急なお母様の出現にあれこれ考えた挨拶が全部お腹の中にひっこんでしまった!
「あ、こいつ。昨日言ってたやつ。」
「あ、は、はじめまして・・・。」
「まー!はじめましてー!」
「あ、どうも・・。」
上手く声が出なくて銀ちゃんの後ろに隠れながら小さな声を搾り出すのでやっとだった。
お母様の方をちらりと見るとにこっと笑ってる目と目が合った!わ!(ドキ!)
「可愛い子連れてきちゃってー!」
「ぁ、ど、どうも・・・。」
さっき言ったじゃん!これ!まるで借りてきた猫だ。
ぼそぼそとしか返事できないで俯いているあたしの手を銀ちゃんがひっぱって、
「まー上がりなさいよ。」とか言いながら履き古されたナイキの運動靴をだらしなく脱いでよっと
一段高い家の中に上った。
「わ!ま、待って・・・!」
あたしも急いで少し汚れた黒いローファーを脱いでキチンと両足揃えて置いて銀ちゃんに続いた。
待って!
「俺の部屋、上だから。」
「あ、うん。」
そういって銀ちゃんは廊下の奥のほうにある階段に歩いていった。
よっこらせと歩くおじさんくさい銀ちゃんの手に急に女の人の手が伸びて体をぐい!とひっぱった。
この手はあたしの手じゃない。お母様の手だ。
それから階段の隅のほうでコソコソ話してる・・・!なに?!なんのはなし・・!?
あたしのこと!?ダメだった!?なんかダメだった!?
気になる。き・に・な・る・・・!一生懸命そっちの方に耳を傾ける。全神経をお母様と銀ちゃんに注ぐ。
(あんた・・・!変なことすんじゃないわよ・・・!)
(おめー!しねーよ!そーゆう段取りつーか注意事項は昨日のうちに言っとけよ!ぐだぐだじゃねーか!)
(さっきヘチマ手入れしてるときに思い出したのよ!)
(おめーヘチマの手入れってなにすんだよ!)
(とにかくわかったか!この天パ坊主!)
(おめー!親父に言いつけんぞ!テメーの女が天パ遺伝子をけなしたってよ!もーいーだろ!)
ごそごそと聞こえてきた内容に思わず顔が熱くなる。ホッとする。
ほ。良かった。お母様にダメ出しされなくて・・・!けれど内容が内容だから思わず恥ずかしくなってしまい、
あたしは下を俯くしかない。そんなあたしに気がついてだか気がつかなくてだか、銀ちゃんがあたしの手をまた握って
「こっちだから。」そうぼそりと言ってぐいぐい歩いて言った。
後ろからニコニコとしているだろうと思われるお母様の声がしてるけどなんだか気恥ずかしい。
「ゆっくりしていってねー!」
「ぁ、は、はい。」
「うるせー!」
目の前をぐいぐい歩いていく銀ちゃんはいつもと変わらずゆるーい声だけど、
そんな銀ちゃんの耳が赤いのは気のせいだろうか?
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17歳の銀ちゃん・・・。それが非常に萌なんです。(きしょ!
ブラウザバックプリーズ!
06.2.5